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日本ソーシャルワーク学会研究倫理指針

【目的】
  • 本指針は,ソーシャルワークの研究に携わる日本ソーシャルワーク学会会員(以下,「会員」という)の研究における知的誠実さを涵養し,研究の倫理的なあり方を示すものである.
【遵守義務】
  • 会員は,研究過程および結果の公表にあたって,良識と知的誠実さと倫理が要請されることを自覚し,本指針に則って行動しなければならない.
  • 会員は,研究者として,合理的な研究法に関する知見を探求し,使用することに努めなければならない.
  • 会員は,研究者として,新旧の先行業績を探索し,学界の研究水準の維持・向上に努めなければならない.
  • 研究活動の遂行にあたり,研究協力者(当事者・調査対象者等)の個人情報が守られるよう,最大限の配慮をしなければならない.
【禁止事項】
  • 研究活動によって得られた情報は,本来の目的以外のために利用してはならない.
  • 研究活動の遂行にあたり,他者の研究成果を剽窃したり,調査データなどを改竄,捏造してはならない.
  • 研究成果の公開にあたり,同じ成果を重複したかたちで公開,特に査読を伴うような研究誌等に投稿してはならない.
  • 研究成果の公開においては,研究活動における責任,研究遂行の作業量,成果の成文化への貢献に応じて適切な順序によるオーサーシップの記載を省略してはならない.
【倫理的配慮】
  • 研究代表者もしくは共同研究者の所属組織に倫理審査委員会が設置されている場合,審査を受けなければならない.なお,研究の公開に際しては,「倫理的配慮」の項目に審査結果を明記すること.
  • 研究代表者もしくは共同研究者の所属機関に倫理審査委員会が設置されていない場合は,文部科学省の示す「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」等を参照し,研究者としての研究倫理を遵守した諸手続きを行い,その旨を明記すること.
  • 研究において利益相反が危惧されることがないように,事前の手続きにおいて利益相反の有無を確認するとともに,利益相反のおそれがある場合には研究への参加を禁止する.
【研究活動におけるハラスメント】
  • 研究活動において,いかなるハラスメント行為もしてはならない.
  • 大学内・研究所内あるいは共同研究組織において,上位の権限・権威・権力を持つ者がそれを行使して,下位の者に対して,研究・教育・資格付与・昇進・配分等において不当な差別を行ったり,不利益を与えてはならない.
  • 対象を特定し,もしくは特定せずに,不当な批判を行ってはならない.
【説明と同意】
  • 研究の実施にあたって,研究協力者に対して,研究目的と内容,研究結果の公表の方法について十分な説明を行い,文書で同意を得なければならない.
  • 研究協力者が研究の全体ないし一部への参加に同意しないことができるように,また,同意を撤回できるよう諸手続きを取らなければならない.
  • 研究協力者の理解力に応じたわかりやすい言葉で説明するように努め,本人の利益を損なわないよう最大限の配慮をしなければならない.
  • 研究協力者が未成年の場合や何らかの理由で有効な同意が得られないと判断される場合は,代諾者等から同意を得なければならない.
【事例研究】
  • 自験例(1例もしくは少数例)の事例およびソーシャルワーク等社会福祉実践の既存データを活用して研究する場合は,研究協力者を特定できないようにしなければならない.
  • 自験例の事例を使用する場合,あるいは口頭発表する場合は,研究協力者および,その所属組織・機関の許諾を文書で得なければならない.
  • 公開されている他験例の事例を使用する場合は,引用を明示しなければならない.
  • 事例研究としての適性を欠くおそれがある事柄―係争中の事件や利用者と援助者の間に利害関係が生じる可能性のあるもの等―を,題材として取り扱うことは避けなければならない.
  • 研究結果の発表に際し,研究協力者(当事者・地域・団体等)の匿名性が守られなければならない.ただし,自治体等の組織を研究協力者とした場合,あるいは自治体等からの委託研究,さらには特定地域に固有の事象の研究等,研究協力者の了承があり,研究目的の遂行上必要不可欠な場合は,この限りではない.
  • 研究協力者からの請求に応じて,研究協力者に公開内容を事前に開示しなければならない.
【調査研究】
  • 調査用紙(質問紙)やインタビュー調査の文言は,研究協力者の名誉やプライバシー等の人権を侵害するものであってはならない.
  • 他者が行った調査で使用された調査用紙(質問紙)の全部または一部を使用する場合は,その旨を明示しなければならない.
  • 研究結果の発表に際し,研究協力者(当事者・地域・団体等)の匿名性が守られなければならない.ただし,自治体等の組織を研究協力者とした場合等,研究協力者の了承があり,研究目的達成において妥当性が認められる場合は,この限りではない.
  • 調査結果の発表においては,調査の手続き過程が詳細に示されなければならない.
【データ管理】
  • 事例研究・調査研究のデータ管理は,厳重に行わなければならない.
  • データの保存期間については,原則として10年間とし,データの開示を求められたときにはこれに対応しなければならない.
  • 必要な保存期間を経過した当該データ等については,速やかに責任を以て、適切な方法により廃棄を行わなければならない.
【研究資金】
  • 研究資金を使用して研究する場合は,研究資金の供与機関および導入機関の定める執行規程を遵守し,研究目的に合致した適正な使用でなければならない.
  • 研究資金を使用して研究する場合は,会計を明瞭にし,研究目的に合致した予算,予算に合致した使用,流用のある場合の理由の明示,支出に関する領収書などの証拠書類の整理保存に努め,その使用が不正なものであってはならない.
  • 研究資金を使用して研究を行った場合は,研究成果の公表時にその旨を明記しなければならない.
【共同研究】
  • 共同研究の組織の運営および会計は民主的になされなければならず,構成員の一部に過重な負担をかけたり,不明瞭であってはならない.
  • 共同研究の成果の発表にあたっては,構成員は研究過程と成果への貢献に応じた取り扱いを受けなければならない.
【研究データの権利】
  • 研究データ使用の権利は,そのデータを直接集めた人だけでなく,研究に学術的な貢献をした人や組織すべてが何らかの権利を保有していると考えられる.研究発表においては,これらの関係者の権利にも十分に配慮しなければならない.
【学会発表】
  • 学会で発表する場合(口頭発表,ポスター発表,およびその他の発表)は,その内容が社会的に意義のあるもの,あるいは独自性があることの自覚のもとで行われなければならない.
【書評】
  • 書評は,著者の人格を傷つけるものであってはならない.
  • 書評は,発刊された研究業績の評価を含むものであることから,評者は公正・客観的に批評しなければならない.
【査読】
  • 査読は,著者の人格を傷つけるものであってはならない.
  • 査読は,投稿された研究業績の評価を含むものであるから,査読者は公正・客観的に評価しなければならない.
  • 査読者は,原稿が公刊される前に,その内容を自分の研究に利用したり,第三者に明かしてはならない.
(指針の変更)
この指針を変更するときは,理事会の議決を経なければならない.
付則
  1. この研究倫理指針は,2010年10月10日に制定した.
  2. この研究倫理指針は,2018年7月20日に一部変更した.
  3. この研究倫理指針は,2023年7月2日に一部変更した.

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