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日本ソーシャルワーク学会会長挨拶

会長就任にあたって
―共同体としての学会の在り方を問う―

小松先生、岡本先生、米本先生、高橋先生、川廷先生についで、2016-17年度の会長を務めさせていただくことになりました。二年間よろしくお願いします。ここでは会長就任にあたっての自らの確認の意味を含めて、学会活動についての基本的な思いを述べさせていただきます。

日本ソーシャルワーク学会は2016年度に年次大会が33回を数えました。会員数は600人程度と中規模ですが、福祉系としては「老舗」学会の一つかと思います。本学会の活動内容(役割)を大別すれば、三つにわけることができると個人的には考えています。第一の役割が「個々の学会員の研究成果の発信の場の提供」です。年次大会における自由研究発表や、学会誌への論文投稿の機会の提供が代表的なものでしょう。ある意味で学会に求められる最も基本的な役割といえるでしょう。また「場の提供」以外にも、会員研究奨励費の制度を設けることによって、個々の会員の研究活動のサポートも行っています。ぜひ会員の皆さんには今まで以上に積極的にこれらの活動をご利用ください。

しかし、学会が個々の学会員の発表の場だけであって良いのかと考えたときに、いささかの疑問も残ります。「学会誌」に投稿論文を載せ、「口頭発表」をするためだけに学会が利用されるとすればそれは残念なことというべきでしょう。学会は会員によって「利用」するための存在であるのではなく、あくまでも会員相互が学会を作っていく研究共同体としての側面を持ちたいとも思うのです。ここでは、詳細を論ずることはできませんが、アカデミズムが、「消費者主義」に親和性を持つのか「共同体主義」に親和性を持つのかという問いにもかかわる問題です。このように考えてくるとき、学会の第ニ、第三の役割が見えてきます。

第二の役割とは「学会が主導する学術的空間の提供」とでもいえるでしょうか。年次大会における学会企画シンポジウムや、大会とは別に行われる学会セミナー、さらには共同研究グループの主催などがそれに当てはまると思います。ある意味で、「研究活動」を細分化していく傾向の強い第一の活動に対して、集約し深化させていこうという思いも込めた活動群です。油断すると蛸壺化しかねない状況に置かれている各会員に(パターナリスティックとの誹りを受けたとしても)、時々に大切なテーマについて皆で考えていくという場の提供ということもしていきたいと思うのです。

以上が会員と学会の関係に焦点を当てたものであるのに対して、本学会はその初期より、第三の「役割」を意識してきました。それは、会員のみに限らない「広く福祉界、社会への貢献」とでもいうべき活動です。本学会は早い段階から「辞典」や「事例集」等の刊行をしてきました。学会としての研究成果の社会福祉界との共有・蓄積の努力といってよいでしょう。さらに最近は「ソーシャルワークコラボ」といった形で実践現場の方たちとの協働の試みも始めました。会員に限らず、現場も含めた福祉界との連携も第三の努力として行われています。

もちろん、便宜上この三つに学会活動を大別しましたが完全に収まりきるものではありません。例えば、ソーシャルワーク理論は一方で個別具体的な実践現場との循環的関係が必要であると同時に、国際的な動向との関係も視野に入っている必要があります。その意味で、今年度から「国際委員会」を常設の委員会としました。今後の大きな成果が待たれます。また、広報や庶務といった学会活動を支える裏方セクションの存在ももちろん忘れてはいけません。まだ具体化の段階に入っていませんが、できれば他のソーシャルワーク系、福祉系学会との連携も模索したいと思っています。

いずれにせよ、「お金を払いサービスを利用する場」ではなく、「お互いが共同体の構成員として刺激し合い、知見を蓄積する場」でありたいと願っています。しかし現実には理想を持って作られた組織・活動も刺激がなければ必ず形骸化します。その意味では現在の本学会の活動も機能していない部分も多いかと思います。会員の皆さんの厳しい指摘と、学会への積極的参加をお待ちしています。
よろしくお願いします。

日本ソーシャルワーク学会  会長 小山 隆

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