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日本ソーシャルワーク学会研究倫理指針

2010年10月10日制定

【目的】
  • 日本ソーシャルワーク学会は,ソーシャルワークの研究に携わる会員の研究における知的誠実さを涵養し,研究の倫理的なあり方を示し,かつ研究過程および結果の公表にまつわる紛争における解決のあり方を示すために本指針を定める.
  • 研究の遂行にあたっては,研究協力者(当事者・機関等)の人権侵害や差別を助長する恐れのあることは取り上げるべきではない.
【遵守義務】
  • 日本ソーシャルワーク学会会員は,研究過程および結果の公表にあたって,良識と知的誠実さと倫理が要請されることを自覚し,本指針に則って行動しなければならない.
  • 日本ソーシャルワーク学会会員は,研究者として,合理的な研究法に関する知見を探求し,使用することに努めなければならない.
  • 日本ソーシャルワーク学会会員は,研究者として,新旧の先行業績を探索し,学界の研究水準の維持・向上に努めなければならない.
【インフォームド・コンセント】
インフォームド・コンセント(十分な説明を行い,同意を得ること)を「研究協力者」(当事者・機関等)から受ける手続きは,原則的に以下に定めるが,研究の内容に応じて変更できるものとする.

  1. 「研究協力者」に以下の事項を含む説明を行う
    • 研究への参加は任意であること.
    • 研究の参加に同意しないことで不利益を受けないこと.
    • インフォームド・コンセントの全体ないしは一部の撤回ができること.
    • 研究の目的と方法の説明.
    • 「研究協力者」として選定された方法と理由.
    • 予測される利益と不利益.
    • 予測される不利益に対する安全対策.
    • 研究結果の公表の方法.
    • 個人情報,プライバシー保護の方法.
  2. 以下の点を留意して「研究協力者」から受諾を得る
    • 「研究協力者」からのインフォームド・コンセントは文書をもって受けるように努めること.
    • 「研究協力者」が未成年の場合や何らかの理由で有効なインフォームド・コンセントが受けられないと判断される場合は,代諾者等からインフォームド・コンセントを受けるように努めること.
    • 代諾者は後見人,親権者,配偶者,父母,成人の兄弟姉妹,子,同居の親族等,研究協力者の意思を代弁できる者とすること.
    • 代諾者からのインフォームド・コンセントは文書をもって受けるように努めること.
  3. 研究代表者もしくは共同研究者の所属組織に倫理審査委員会が設置されていれば,申請をすること.
【事例研究】
  • 自験例(1例もしくは少数例)の事例およびソーシャルワーク等社会福祉実践の既存データを活用して研究する場合は,研究協力者を特定できないように匿名化して使用しなければならない.その際,事例に加工が加えられている場合はその旨を表示しなければならない.
  • 研究協力者から実名公表の承諾を文書で得ている場合にはその旨が明示されなければならない.
  • 自験例の事例を使用する場合,あるいは口頭発表する場合は,前もって研究協力者から文書で承諾を得ることを原則とする.
  • 他験例の事例を使用する場合は,引用を明示する.
  • 研究協力者への研究協力依頼が強要にならないように配慮すること.
  • 研究協力者が研究の全体ないし一部への参加に同意しないことができるように配慮すること.また,同意をいつでも撤回できるよう配慮すること.
  • 研究協力者および家族の心情に対して配慮すること.
  • 事例研究としての適性を欠く恐れがある事柄―係争中の事件や利用者と援助者の間に利害関係が生じる可能性のあるもの等―を題材として取り扱うことは極力避ける.
  • 調査を実施する際,研究協力者の匿名性を守るように配慮する必要がある.ただし,自治体等の組織を研究協力者とした場合,また,公表について研究協力者の了承がある場合などは,この限りではない.
  • 代表的なデータのみを示す場合には,その選択の客観的な基準を明示する必要がある.
  • 研究協力者への依頼事項は研究目的の遂行上,必要不可欠と認められるもののみに限る.
【調査研究】
  • 調査結果を改ざんしてはならない.
  • 調査研究の過程では,その手続き過程が詳細に示されなければならない.
  • 調査用紙(質問紙)および結果データは開示要求に対応すべく,最低5年は保存されなければならない.
  • 他者が行った調査で使用された調査用紙(質問紙)の全部または一部を使用する場合には,その旨を明示しなければならない.
  • 調査を実施する際に,必要がある場合には,調査協力者(当事者・地域・団体等)の匿名性が守らなければならない.ただし,自治体等の組織を調査協力者とした場合,また,公表について調査協力者の了承がある場合などは,この限りではない.
  • 調査用紙(質問紙)の文言は,調査協力者の名誉やプライバシー等の人権を侵害するものであってはならない.
  • 代表的なデータのみを示す場合には,その選択の客観的な基準を明示する必要がある.
【データ管理の留意点】
  • 調査研究のデータ管理は厳重に行わなければならない.これらの個人情報を含んだデータシート・記入用紙や,コンピュータファイルなどについては,原則として調査協力者を特定できる情報(氏名など)を削除したうえで管理する.
  • 各データファイルはできるだけパスワードプロテクションなどのセキュリティー対策を講じたうえで慎重に取り扱う必要がある.ただし,調査協力者の了承がある場合にはこの限りではない.
  • コンピュータ上のデータに関しては,そのコンピュータが完全にインターネット環境から独立している場合を除き,ファイル交換ソフト,スパイウェア等の影響を排除できるような配慮を行う必要がある.
  • 調査データの物理的な管理は,施錠可能な引き出しや棚に収納するなどして,第三者の目に触れることがないようにしなければならない.
【研究費】
  • 外部資金(研究費)を導入して研究する場合には,その会計を明瞭にし,研究目的に合致した予算,予算に合致した使用,流用のある場合の理由の明示,支出に関する領収書などの証拠書類の整理保存に努め,その使用が不正なものであってはならない.
  • 研究費の供与機関および導入機関の定める執行規程を遵守しなければならない.
  • 経絡や団体からの資金の提供を受けて研究を行った場合は,発表時あるいは研究論文にその旨を明記することを基本とする.
【共同研究】
  • 共同研究の組織の運営および会計は民主的になされなければならず,構成員の一部に過重な負担をかけたり,不明朗であってはならない.
  • ・ 共同研究の成果の発表にあたっては,構成員は研究過程と成果への貢献に応じた取り扱いをうけるべきである.
【研究データの権利】
  • 研究データ使用の権利は,そのデータを直接集めた人だけでなく,研究に学術的な貢献をした人や組織すべてが何らかの権利を保有していると考えられる.研究発表においては,これらの関係者の権利にも充分な配慮する必要がある.
【学会発表】
  • 学会で発表する場合(口頭発表,ポスター発表,およびその他の発表)は,その内容が時代の先端にあるか,独自性があることの自覚のもとで行われなければならない.
  • とりあえず発表を申し込んでおき,発表の準備が間に合わないときにキャンセルするようなことはしてはならない.
  • 相当数の発表を多数の研究参加者が第一発表者の名前を次々と代えて使用し,その会場を仲間で独占するような発表は,慎むべきである.
  • シンポジウムや個人発表等において,自分の割り当て時間を延長することは,厳に慎まなければならない.
  • 固有な事例・調査等に基づく発表については,【事例研究】【調査研究】の項に従う.
【書評】
  • 書評は,著者の人格を傷つけるものであってはならない.
  • 書評は,発刊された研究業績の評価を含むものであるから,評者は全文を読了した上で公正・客観的に批評しなければならない.
  • 書評に対して,著者からの要求があった場合には,その反論が許されなければならない.
【査読】
  • 査読は,著者の人格を傷つけるものであってはならない.
  • 投稿された研究業績の査読を行う過程において,著者と査読者の双方の匿名性が保持されなければならない.
  • 査読者は,原稿が公刊される前に,その内容を自分の研究に利用したり,第三者に明かしてはいけない.
【アカデミック・ハラスメント】
  • 大学内・研究所内あるいは上記の共同研究組織において,上位の権限・権威・権力を持つ者がそれを行使して,下位の者に対して,研究・教育・資格付与・昇進・配分等において不当な差別を行ったり,不利益を与えてはならない.
  • 研究者は,アカデミック・ハラスメントの対象を特定し,もしくは特定せずに,不当な中傷を行ってはならない.
<参考資料>
本学会の研究倫理指針をまとめるにあたり,下記の諸学会等の資料を参考にしました.

  • 日本社会福祉学会研究倫理指針
  • 日本ケアマネジメント学会 研究ガイドライン
  • 日本社会学会倫理綱領にもとづく研究指針
  • 首都大学東京南大沢キャンパス研究指針(ヒト) 人文科学研究科
  • 『ソーシャルワーク研究』誌,「人と環境とその相互接触面の諸相に関する研究」倫理指針
付則
  1. この研究倫理指針は,2010年10月10日に制定した.

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